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2005年02月17日
ハーバード大学医学部での医学教育改革
2001年5月に現在最も進んだ医学教育改革を断行しているハーバード大学医学部を
1週間に渡って見学する機会がありました。
まず驚いたのは教育改革は医学部出身者ではなく
教育学部出身の専門家集団が行っているということです。
さまざまな教育関係者に次々と会い、学生の意見を聞き、授業に参加し、
まさに目の回る忙しさと驚きの1週間でした。
まず最初に担当のエリザベス・シルベスターさんにお会いしました。
「医学部と言えども本当の教育改革をするなら医者じゃなく私たちの力が絶対必要。
だって私たちはその道のプロですから」と力強くおっしゃっていました。
その言葉の裏には「医学部教授になんかに任せていたら医学教育なんか良くなりませんよ」という
強力なメッセージが込められているようです。 かなり日本とは趣きが違います。
確かにそうかな? 既成の枠内からの自主改革は難しいのかな?
私の最低限の希望は、
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1.学生と直接会って改革の感想を聞きたい。
2.授業に参加したい。
3.臨床教育をする教官の話を聞きたい。
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という3点でしたがすべてOKで手配してくれました。
3日間びっちり見学することが出来ました。
改革のポイントは
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1.臨床教育(患者を診る力をつける)を重視した。
2.講堂で座って聞く従来の講義をほとんど廃止した。
3.1、2年目は小グループで自主学習スタイルで行う(教官はアドバイスをするだけ)。
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(理由)
内科学や外科学などの進歩は著しいため実技まで含めて覚えなければならないことがとても多い。
そのため基礎系(解剖学、生化学、生理学など)の側の猛反発があったが改革は絶対必要という信念の基に断行。
・解剖学、生理学などの従来の基礎医学の講義は廃止し、
臨床病理学などの共通テキストをもとに臨床に関係するテーマについてグループ内で自主学習する。
・講義は最低限のみに限定し、基本的には廃止。
・臨床重視。自分で考え問題解決できる優れた臨床医作りが目標。つまり
・ 「教える」から「自分で学ぶ」への変換。

医学部校舎の内は大理石のとても豪華(?)。上の写真の方は学内を案内し、
やさしくカリキュラムを説明てくれた教育担当の方です(名前はシークレット?)。

教育改革の中心的役割を果たしている教育担当教官です
(PhDという最高の教育博士の資格を持った方でいまも改革を断行中)。
新しい医学教育の方向性についてとても熱く語ってくれました。
その最大のポイントは「MD(医者に)に任せちゃだめ!」です。

この椅子に腰掛けた貫禄十分の方(?)は何と医学部1年生です。
言葉は悪いですが、ちょっと学生にしてはひねてますよね。
「この人が医学生、何でも聞いてください」と紹介されたときはびっくりしました。
それもそのはず、実は海兵隊に入隊し、そこからハーバード大医学部に応募してパスしたんだそうです。
学費も海兵から支給されているので、自己負担はないそうです。
「ベンチにすわりっぱなしの退屈な講義が無くなって、学生は皆喜んでるよ」。
「誰だって退屈な講義より自主学習の方を選ぶと思うね」と語ってくれました。
いい医者になるにはいろいろな人生経験が大切だとこの国では考えられています。
つまり、医学生の選抜自体が日本と全く違っているようですね。
アメリカの医学部では頭が良いだけでなく、やる気があり
医者に向いている人を採ると聞いてはいましたがここまでとは!
間違いなく、彼は日本には絶対に居ないタイプの医学生です。
日本の医学部入試の不正・裏金事件を思い出ました。
ひょっとしたら、教育改革の前にまず入試改革がこの国では必要なのかも知れませんね?!
つまり良い学生が入ればいい自然に医者も育つ?

何とこれが授業風景です。「今日は天気が良いので、
2グループ合同で屋外でディスカッションしましょう」
という担当教官の一声で中庭に出ました。
上の左から2人目のスキンヘッドの方ももちろん学生さんですよ!
ちなみに左端の金髪の女性の方が教官です(産婦人科医)。
この国では学生と教官の区別がとても難しい?!

1年生の小グループ自主学習(7−8人)の授業開始直前の様子です。学生を良く見て下さい。
ここの学生はアジア系2人、黒人1人、白人4人とちゃんと人種のバランスまで考えて
入学させていることが分かります。このあと担当教官が1人加わりっ授業開始。
担当学生が発表し、他がどんどん質問して行きます
(PBL=プロブレム・ベースト・ラーニングという学習方法を取り入れています)。
とても明るく元気に授業が進行して行きますが、その内容は結構ハイレベルなのです。

こちらはもう少し上の学年(3年生?)の学習風景です。
胸のレントゲン写真やCT写真から診断名をつけるトレーニング。つまり実戦訓練ですね。

立派な大理石の医学部校舎(正面)です。さすがハーバード大学!!
校舎はコ字型に配置され真ん中に広い芝生があります。

内分泌・代謝学を教えているユーティガー教授です。
かわいいネクタイを見るとなんだか小児医のようですね。実際とても気さくでやさしい先生です。
偶然ですが、実は私のAGE研究がニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンという雑誌に載ったとき
審査をしてくれた先生でもありました。このときの私の研究をとても褒めてくれました。
別の教官(ハーバード卒)からは「ここの学生はやる気があって入学して来たやすばかりさ。
講義なんかやめて2,3年目から実地の医療をどんどん経験させ、
患者さんを診る力をつけさせるのが一番さ」との話を聞きました。
<おわりに>
私が感じたことは「日本ではさっぱり改革が進まないうちに、こちらではどんどん改革が進んでいるな。
かなり遅れをとってしまったな」という点でした。
まず、講義中心を廃し、自分で学ぶトレーニングと臨床実地訓練の充実が必要と感じました。
アメリカやヨーロッパの医学教育を実地見学し、
教育制度もさることながらむしろ医学生の質の差を強く感じました。
とくに日本は大学間でかなりの学生の質に差があるのが現実。
つい最近も入試にまつわる裏金問題が新聞をにぎわわせましたよね。
実のところ医師になるのは止めたほうがいいのではないかと思われる程、向いていない者、全くやる気のない者も沢山いるのが現実です。せっかく医学部に入ったのだから卒業させて上げようという大学側の(または親の)温情(?)は返ってあだで、むしろ向かない人は方向転換を図ってもらったほうが社会的にもまた本人のためにも良いのではとつくづく思います。しかも、理想の医学実現のためでなく、国家試験対策が教育改革の目標になっているのは残念な現実です。
投稿者 ageclinic : 2005年02月17日 18:48